歯科矯正治療について
狭窄歯列(窮屈な⻭並び)の原因と早期(小児期)に矯正をする意義
狭窄歯列の原因には、「遺伝的要因」と「環境的要因」があります。
子供の顔が親の顔に似るのは顎の形などの⾻格が似ている(遺伝的要因)からで、少なからず歯並びもその影響を受けています。しかし、その反面、顎の成長は顔面周囲の筋肉の影響も受けており、筋肉は生まれた後の環境に左右されやすい(環境的要因)ので両親の歯並びはきれいなのに、お子様に狭窄歯列が見られた場合は生活習慣や癖が筋肉に悪い影響を及ぼしている可能性があります。
主には、
➀軟食が多いため噛む力が弱く筋肉が発達しない
➁唇が閉じていない(口呼吸をしている)
➂舌の位置や動きが正常でない
④舌を突き出したり、唇を咬む癖がある
などです。
本来、歯は口の周囲の筋肉と舌の筋肉とのバランスがとれたところに並びます。このどちらの筋肉に異常があっても歯は正常に並びませんし、顎(あご)の骨も十分に成長しません。
小児期からの早い時期にこれらの筋肉を正常に機能させることで、顎の成長や歯並び、ひいては顔や頭(脳)までも自然と良い方向に成長を促すことが可能となります。
小児期の矯正治療は「歯並び」だけでなく「筋機能の改善」も目的とした治療法ですので、できるだけ早期に開始することが望しいのですが近年では、成長期の顎拡大矯正も特殊な装置により可能になってきました。(SH療法)
また、従来の矯正のように抜歯をすることも少なくなっておりますので、必ずしも「大人だから矯正はできない。」、「大人だから歯を抜かなければならない。」ということはございませんので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
唇が開いている(口呼吸している)状態
※正常な場合、安静時には唇は閉じており鼻呼吸しています。
舌の位置異常
※正常の場合、安静時に⾆は上顎の前⻭の裏側付近(スポット部)に軽く接しています。
唾液や⾷物を飲み込む場合もこの位置にある必要があります。
「舌が下がった状態」では、正しくアゴが成長しないだけでなく⻭並びに悪い影響が出ます。
悪い癖
舌を突き出す癖
唇を咬む癖
正しく噛む習慣を身につけましょう
矯正治療後は少なからず「後戻り」をします。この「後戻り」をなるべく最小限に抑えるには正しい噛み方を身につけることです。
なるべく噛みごたえのあるものを「前歯で噛み切り」、奥歯ですりつぶすように」食べることで、歯や顎が刺激され安定してきます。
お勧めのものは、フランスパンやするめイカです。
ガムトレーニングなどもありますので、当院スタッフにお声かけください。
これらを前⻭・左右奥歯で均等に「すりつぶす」ように約 10 分間良く噛むことを意識します。
1⽇2回(計約20分間)行うことが目安です。
この時、口を開けてクチャクチャと噛まず、唇が閉じていることを確認してください。
⾍⻭予防に効果がある「キシリトール⼊りのガム」がお勧めです。
適応年齢
乳歯〜永久歯が生えそろうまでの5才〜12才位までの顎の成長期に行うことが望ましいですが、成長期でも治療は可能です。
矯正治療装置の種類
SH療法(顎拡大療法)
312,000 円〜(税込)
軽度〜重度の狭窄歯列で「筋機能訓練用装置」だけでは十分な結果が得られない場合、金属のバネで固定させる「取り外し式の装置」を使用します。そして、装置に埋め込まれた スプリングによって積極的に顎の拡大を行い歯が並ぶすき間を確保していきます。
『スライデックス』という スプリングが組み込まれた特殊な装置を使用します。スプリングで狭い⻭並びを広げ、快適な口内環境に繋がります。
※これらの装置を装着しながら唇の筋肉を強くしたり、舌の位置や動きを正常に するためのトレーニングも併用して行います。
①筋機能訓練用装置(112,000円税込)・・・主に小児期に使用
唇や下の筋肉を正常に機能させるための装置です。 他の装置と併用する場合もあります。
②透明マウスピース矯正(アソアライナー)¥90,000(税込)~(要見積もり)
従来の矯正はブラケット(矯正ワイヤーを歯に固定する器具)を使用しておりましたが、アソアライナーで治療すると目立たないため、矯正治療をしている事に気づかれません。 製作にはコンピューターを使用しますので、とても正確に作られます。日常会話も問題なく、食事の時に取り外しができるため、ストレスがありません。アソアライナーは比較的軽度の不正咬合で、3ヶ月〜1年位で終了できるケースに用います。
一般的な料金設定
以下は一般的な「小児矯正(およそ12歳までに治療を開始した場合)」の料金です。
成人矯正もこれに準じますが、歯並びの状態で追加料金が発生する場合がございます。
顎の大きさや歯並びの状態で途中のステージで終了することも可能です。また、中断した場合でも途中のステージから再開が可能です。
進行段階 | 料金(円) |
---|---|
ステージ1 | 156,000(税込) |
ステージ2 | 156,000(税込) |
ステージ3 | 156,000(税込) |
ステージ4 | 156,000(税込) |
合計 | 624,000(税込) |
※各ステージには資料採得料(型取りや口腔内写真など)2,000円が含まれております。また、定期来院時には矯正装置調整管理料がかかります。
治療費
- 矯正治療費90,000 円(税込〜)
(歯並びの状態や治療を開始する年齢、装置の種類によって異なります)
- 矯正装置調整管理料1回につき2,000円(税込)(月合計 5,000円(税込)まで)
(月に1〜2回来院していただき矯正装置の調整、状態の観察、フッ素塗布を行います)
ご注意
矯正装置が修理不可能な破損、紛失または指⽰通り装着していただけなく合わなくなり再製作の必要がある場合などは装置製作料が別途かかりますのでご了承ください。
資料の活用について
当院では、矯正治療開始時や途中経過、終了時の状態を写真や模型にして保存しております。これらの資料は歯科医療発展のため、学会や講習会等で参考資料として使用させていただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。
あくまでも個人情報ですのでそれ以外に使用することはございません。
当院における治療例
◆症例1.反対咬合(受け⼝)を筋機能訓練⽤装置で改善
1)年齢・性別:6歳・男性
2)来院日数(治療期間):2〜4ヶ月に1回の受診で約4年
3)治療方法:
作用機序:反対咬合改善を目的として、「ムーシールド」という筋機能訓練用装置を就寝中に装着していただきました。装置を装着することで、舌の位置を正しい位置に改善し、上アゴの成長を促します。上アゴの成長に伴い、反対だった噛み合わせが改善してゆきます。
4)注意点及びデメリット:
- ①自由診療です。
- ②著しい骨格性の反対咬合や噛み合わせの状態によっては改善しないことがあります。
- ③治療期間が長期にわたることがあります。
- ④反対咬合は改善しても歯の重なりやねじれなどが起こることがあり、その場合他の歯列矯正方法に切り替えることがあります。
- ⑤装置を入れていない時間帯は、患者さん本人が「舌を上アゴに付ける」「唇を閉じて鼻呼吸する」という意識を持ち実行できなければ、長期の安定は難しいです。
◆症例2.顎拡⼤装置で上下の顎を広げることで⻭並びを改善
1)年齢・性別:8歳・女性
2)来院日数(治療期間):1〜2ヶ月に1回の受診で約3年
3)治療方法:
上下のアゴが小さいため、歯が並びきらずに前後にずれて生えてしまった状態でした。顎拡大装置(SH療法)で狭いアゴを広げることで歯が並ぶスペースを確保し、きれいな歯並びに改善しました。
4)注意点及びデメリット:
- ①自由診療です。
- ②歯列不正の状態によっては十分に改善しないことがあります。
- ③1日8時間以上の装着が必要であります。
- ④治療期間が長期にわたることがあります。
- ⑤著しい歯のズレやねじれなどがある場合、一時的に他の歯列矯正方法に切り替えることがあります。
- ⑥装置を入れていない時間帯は、患者さん本人が「舌を上アゴに付ける」、「唇を閉じて鼻呼吸する」「よく噛んで食事をする」などの生活習慣への意識を持ち実行できなければ、長期の安定は難しいです。